書評

『ヤバい集中力』を読んで内なる獣を乗りこなそう【感想】

こんにちは、ライターのちな(@writer_china)です。

先日『ヤバい集中力』を読んだので、ためになったポイントをシェアします。

著者は、サイエンスライターの鈴木祐さん。ご自身のブログ「パレオな男」では、心理・健康・科学に関する最新の知見を紹介し続け、3年で月間100万PVを達成しています。

そんな鈴木祐さんの2019年9月の新刊『ヤバい集中力』は、発売後Amazonで瞬殺されましたが万単位の重版が決定しました。

誘惑に弱いあなた、必読ですよ!

……と書きましたが、誘惑に弱くない人なんているんでしょうか?

いないと思います。

誰しも程度の差こそあれ「あー、誘惑に抗えなかった……」とか「もっと集中力があればな〜」と思うことがあるでしょう。

私もしょっちゅうあります。

  • もっと集中力があれば、仕事がはかどるのにな〜
  • もっと集中力があれば、たくさん本を読むことができるのにな〜

私のように集中力に関する悩みを抱えている人は、この本で具体的なテクニックを得られます。

さっそく具体的なテクニックを紹介する前に、「獣」と「調教師」について知っておきましょう。各テクニックを実践する上で必須の前提知識です。

獣と調教師。両方ともあなたの中に存在しています!

人間の脳には2つのエリアがある

本書では、人間の脳にある2つのエリアを「獣」と「調教師」に例えています。

獣と調教師。何のメタファーか分かりますか?

答えは……

ちなみに獣は、いにしえの力。調教師は、人類が比較的最近になって獲得した力だそうです。

本段落では「獣(本能)」と「調教師(理性)」それぞれの特徴を理解します。

紹介されている45のテクニックを実践するにあたって、必須の前提知識です。

獣(本能)の特徴3つ

  1. 難しいものが嫌い
  2. あらゆる刺激に反応する
  3. パワーが強い

まあ、納得。うんうん。

調教師(理性)の特徴3つ

  1. 論理性を武器に使う
  2. エネルギー消費量が多い(ワーキングメモリを使う)
  3. パワーが弱い

これも納得できます。まあ、そうでしょうね。ふむふむ。

ただ、ここで私が「あっ、そうなんだ」と思ったポイントは、獣(本能)こそが集中力の鍵だという記載です。

獣(本能)こそ集中力の鍵!

だって、逆のような感じがしませんか?

  • 「試験勉強しなきゃいけないけど、録画していたドラマの続きが見たい」
  • 「1週間後が納期だけど、今日くらい作業をサボってもいいか」

こんなふうに「やりたいことやろうぜ」と考えそのまま実行するのが獣(本能)だとして、「いやいや獣、それじゃいけないだろう!今やれ!」と、セルフツッコミ入れてやるべきことをやらせるのが調教師(理性)。

↑私の中では、こんなイメージ。

だから「え、集中力の鍵って、調教師じゃないの?」って困惑したんですよね。

しかし、繰り返しになりますが、獣(本能)が集中力の鍵なんです。

これにはちゃんと理由があります。

獣は難しいことが嫌い→省エネ

まず、獣(本能)の特徴1つ目は「難しいものが嫌い」ですが、獣はこれによりエネルギーの浪費を防止できたんです。

ではなぜ獣がエネルギーの浪費を防いでいたかと言うと、貴重なエネルギーを効率よく使って、生き残るため。

食料が見つからずに飢え死にしそうな時や、伝染病にかかってしまったときなど、いざと言う場面でエネルギーが残っていなかったら、死んでしまいます。

そこで獣はエネルギーの浪費を防ぐためにも「難しさを嫌う」という特徴を備えたのです。

生きるために難しいことを嫌って省エネしてたんですね。

獣はあらゆることに反応→並列処理が得意

次に、獣(本能)の特徴2つ目は「あらゆる刺激に反応する」でした。

なんか「あらゆる刺激に反応する」と聞くと、注意力散漫なイメージがあります。集中力とは真反対では?

しかし、あらゆる刺激に反応するできる獣は、並列処理が得意だということでもあります。

たとえば私達が街中で知り合いに出くわした時、獣はまず相手の顔立ちや声の情報からその知り合いが何者かを判断します。続けてその人と過去にどんな会話をしたか、この人がどんな性格やどんなキャラクターの人だったかなど過去のデータをサーチし始めます。

こういった複数の処理を意識的に行おうとすると、人間はまともに生活できません。

私達は日頃から獣の並列処理能力に助けられてたんですね……。どんなに自分を「理性的な人間だ」と思っていたとしても、です。

ここで一旦、獣の持つ3つの特徴を、言い直した形で整理します。

獣の持つ3つの特徴
  1. エネルギーの浪費を防止する
  2. 並列処理が大の得意
  3. パワーが強い

獣、出来る子!きみのパワーを使わない手はない!

ってことで、獣(本能)を調教師(理性)の力で支配できればいいんだ!

……と考えるかもしれません。(考えました)

しかし、ここで残念なお知らせがあって、調教師は獣に絶対に勝てません。

ではどうすることもできないのかと言うと、そうではないです。

「調教師(理性)がいくら頑張っても真っ向勝負で獣(本能)に勝つことはできないから、誘導テクニックを駆使して乗りこなそう!」

これこそ本書のメッセージ。

このメッセージを踏まえて、具体的な獣誘導テクニックの数々が紹介されていくのです。

ここまでのポイントまとめ
  • 調教師(理性)が獣(本能)と戦っても絶対に勝てない
  • 真っ向勝負で勝てないなら誘導テクニックで乗りこなせばOK!

この本では45の誘導テクニックが紹介されていますが、その中でも「私がこれは使えそうだ」と思ったものを2つに絞って紹介します。

テクニック1.朝イチは◯◯◯から手をつけて集中力を加速

最近、仕事のタスクをどういった順序でこなしていくのが最良なのか迷っていました。

自分にとって重たい難問から片付けてその後を楽にするのか、とりあえず最初にやりやすいところから手をつけてテンション上げて残りのタスクもこなしていく方式が良いのか……。

「メールの返事を朝イチでするな」とか「いやいやとにかく自分のやりたいタスクからしてテンション上げていくのがいいんだ」とかいろんな説があって、私の中の獣が機能不全を起こしていたのです。

1日のタスクを書き出した後、どういった順序で進めていくのが最も集中力を加速できると思いますか?

  1. 重要なタスクから順にこなす
  2. タスクを書いた順にこなす
  3. 簡単なタスクから順にこなす

答えは…………

…………

……

3番です。

簡単なタスクをこなすと脳内ドーパミンが増え→集中力が加速し→集中力がキャリーオーバーされて、残りのタスクも進められる。

ということです。

ですので、「朝イチはメール返信や書類作成のような5分前後でカタがつくようなものを最初に行うのがベスト」だと言うことです。

テクニック②集中力をあきらめる

逆説的な方法になるんですが、獣の持つ集中力を引き出そうと思ったら、時には集中力を諦めることも大切です。

そもそも集中力が発揮できない人には、2つのパターンがあります。

  1. 集中力を追い求めすぎるタイプ
  2. 集中力がない自分を責めすぎるタイプ

「あっ、私は2だ……」とドキッとしました。

そもそもこの本を買ったのも集中力が発揮できない自分が嫌で、どうにか変えたいと思っていたからです。

しかし、この本によれば「数あるストレスの中でも自責の念は最もタチが悪い」と述べられています。

なぜかと言うと、他人から受けるストレスはかわしたり耳をふさいだり遮断できるけれど、自分の内側から襲いかかってくるストレスを遮断するのはそう簡単では無いから。

ザルツブルク大学による論文では、「自責する回数が多い人ほど脳が小さくなる」と言う結果が出ています。

そこで現代の科学は「集中力がない時は無駄な抵抗をやめて諦めよう」という結論を出すに至ったのです。

しかし、ここで誤解してはいけないのは「ありのままの自分でOK!」ではないと言うこと。

「集中力が無い時は諦めるしかないんだから仕方ないや〜」と本能のままに、Twitterを見続けたり、やりたいようにやっていては、当然成長はできません。

大切なことは、「集中力が無いという自分の不完全さを認めた上で、失敗を冷静に分析していくこと」

そしてこの「不完全さを認めた上で失敗を冷静に分析する考え方」を「セルフ・アクセプタンス」というそうです。

集中力を諦めた後に実践すべき「セルフ・アクセプタンス」

セルフ・アクセプタンスを鍛える方法が本書では4つ紹介されているんですが、その中で特に私が気になった1つを紹介します。

その方法とは「ポジティブリソース法」。

セルフ・アクセプタンスの手法「ポジティブリソース法」

ポジティブリソースはミシガン大学が考案した方法で、「失敗したらあえて新たなことにチャレンジしてみる」というもの。

ポイントは「新たなこと」にチャレンジする、という点です。

「気晴らし」ではなく「新たなこと」なんです。

失敗→気晴らし……このルート、選びがちです。

  • 「仕事で失敗した?パーッと飲みに行こう」とか
  • 「1日のタスクが達成できなかったけど頑張ったご褒美に好きなケーキを食べよう」とか……

なぜ「気晴らし」ではなく「新たなこと」が推奨されるかというと、「新たなこと」には前向き要素があるからだそうです。

具体的にどんな「新たなこと」を学ぶと良いのかについても、2つ紹介されています。

  1. 自分の強みが使えること
  2. 新しい知識やスキルが得られること

自分の強みが活かせて、なおかつ自分にとって新たな知識やスキルが身に付くものであれば、ポジティブなリソースの量が増えるので、失敗に強いメンタルが育つということです。

私も今後は「失敗したから気晴らししよう」じゃなくて「失敗したから新しいこと勉強しよう」って考え方にシフトしようと思います。

まとめ

『ヤバい集中力』まとめ
  • 『ヤバい集中力』は、自分のうちに眠る獣を乗りこなすためのマニュアル本である
  • テクニック1.簡単なタスクからこなして集中力を加速せよ!
  • テクニック2.どうしても集中できない時は諦めた上で対処せよ!

どのテクニックが役立つかは人によって変わってきます。

実際に本書を手に取って、あなたの内に眠る獣を乗りこなしてくださいね!

補足

・試し読みで序章部分が読めます。購入を迷っている方は参考にしてみてください。
出版社の試し読みページへ

・作者のブログに本書への感想がまとめられています。
「ヤバい集中力」の増刷御礼と本にいただいた感想まとめ #1