『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』という本を紹介します。
この本は、デンマークで心理療法士として長年多くのHSPをカウンセリングしてきた、イルセ・サンによって書かれた本です。
イルセ・サン自身もHSPです。
この本には、HSP=人一倍繊細で敏感な人が、キャラクターを変えようとすることなく、ありのままの自分に価値を見出すための知識やアドバイスがたくさん詰まっています。
この本を通してイルセ・サンが伝えたいのは、
- HSPは不利なだけじゃなく有利なこともたくさんあること
- HSPは制約になるだけじゃなく新たな可能性をもたらしてくれるものであること
- 繊細な心の持ち主たちが自分の長所や可能性に目を向けられるようになること
です。
この本の構成は、
- HSPの能力
- HSPが抱えやすい心の問題
- 「鈍感な人たち」とうまく付き合う方法
- 「敏感な自分」とうまく付き合う方法
の4章仕立てとなっています。
私が特に印象に残ったポイントに絞って紹介していきます。
ちなみに記事を書いている私自身もHSPです。
HSPという言葉を知ったのは、ここ数年です。
それまでずっと「こんな神経質な考え方の自分はおかしい」とか「自分の性格を変えたい」とか「○○さんみたいになれたらな」とか、自分を変えることばかり考え、四苦八苦していました。
それはもう疲れました。
今は「これは気質だ」「同じような人もいるんだ」「無理して変えなくて良い」「てか、変えない方がいいこともあるんだ」と分かっているので、少し気がラクです。
まあ正直、完全に吹っ切れたわけでもなく、たまに自己嫌悪もあります…だから、これがHSPですね笑。
ただ、知っておくことで気がラクになります。
「仕方ないじゃん、これが私なんだから」「だってHSPなんだから。変えられない」と割り切るきっかけとか根拠になります。無駄に自分を責めたり、人格を無理やり変える努力もしなくてすみます。それよりはHSPの能力を活かせることをしたほうがよっぽど良いと気づきます。
ごりごりのポジトークになりますが、HSPは繊細さゆえに誠実な仕事をするので、クライアントからの信頼を得やすいです。他の人の仕事を見て(あ、こうすればもっといいのに…)と課題点に気づき、修正できます。
私もHSPであるがゆえに仕事につながったケースが数回あります。その時は「HSPであるがゆえに!」とは思ってないですが、振り返れば「HSPの気質が好結果をもたらしてくれたんだなあ」と思うケースです。
これってもうスキルですよね。活かさない手は無いです。
前置きが長くなりました。
それではさっそく本書の内容へ参りましょう!
目次
HSPとは?
そもそもHSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字を取ったもので、「とても敏感な人」「人一倍繊細な心の持ち主」のことを指します。
世の中の5人に1人がHSPだと言われています。
HSPは、病気ではありません。
その人が生まれ持った気質です。
HSPという概念は、アメリカの精神分析医エレイン・アーロンによって、1996年に提唱されました。
人を男性と女性という性別に分けるように、とても敏感なタイプ(HSP)と、タフなタイプの2つに分けたというだけのことです。
HSPの特徴として「自己評価が低いこと」が挙げられます。
なぜかというと、HSPは全く異なるタイプの行動が評価される文化で生きてきたからです。
あなたも、自分を180度変えようとしていませんか?
もしそうだとしたら、この記事を最後まで読んでもらえたら嬉しいです。ありのままの自分で問題ないんだと分かります。
HSPチェックテスト
この本にはHSPチェックテストがついています。
48の質問に答えていくだけで、感受性の値を計ることができるというものです。
質問項目をいくつか紹介します。
- 毎日、1人でいる時間が必要だ
- 痛みを感じやすい
- 日々、どんな心配が起こりうるか予測して、対応策を考えることに多くの労力を費やしている
- 誰かの怒りを感じるとたとえ自分に向けられていなくてもストレスになる
- 緊迫した空気が流れていると、その場から離れたくなる
- ほかの人の痛みが、自分の精神の奥深くに入り込んでくる
- 大量の情報や刺激にすぐに耐えられなくなってしまう
- 涙もろい
計算結果の値が60以上ならHSPの可能性があります。
ちなみに私は90でした。
気になる方はぜひ一度、テストしてみてください。
第1章 HSPの能力
HSPの能力として、この本では7つ紹介されています。
1.一度に多くの情報を吸収できる
HSPは細かいところまで感じ取り、下界から得た情報をもとにさまざまな思考や空想を広げることができます。
そのため、HSPの「ハードディスク」は他の人たちよりもすぐいっぱいになりやすいです。
2.音やにおいなどの細かな違いも察知できる
他の人が普通だと感じる音も、HSPにとっては不快な雑音になることがあります。
たとえば花火や、上の階の住人が歩く音、美容院のパーマ液のにおいなどです。
3.ゆっくり、深く多角的に考えられる
HSPは1つの物事についてたくさんの異なる観点からとらえることができます。
作家やアーティスト、思想家にもHSPが多くいます。
4.とても慎重で、危機管理能力が高い
口に出すか行動に出る前に、よく観察し、よく考えます。
この能力のおかげで、失敗したり、不運に見舞われたりせずに済みます。
5.共感力が高く、気配りが上手
HSPは共感力が高く、他人に感情移入できます。
相手の気持ちを察知することができ、とても気が利きます。
HSPの多くが、サービス業や人をサポートする仕事に身を置き、相手から感謝されるようです。
6.誠実で責任感がある
HSPの多くは非常に誠実で、すべての物事の責任をとろうとする傾向があります。
気をつけてほしいのは、気に病みすぎてはいけないということ。
すべてのことに責任をとることはできません。
あなたが他の人の責任を肩代わりするよりも、自分の責任は自分で取って誤りから学ぶ方が、その人の為になる場合もあります。
7.想像力が豊かで内的生活が充実している
1人でいるときに退屈することは滅多になく、他の人たちに楽しませてもらう必要はありません。
以上が、この本で紹介されているHSPの7つの能力です。
ざっくりまとめると、
共感力に長け、思慮深く、1人の時間を満喫できる
それがHSPの能力だと言えます。
HSPの能力は、良好な環境下であれば、人の役に立ったり、自分の可能性を広げたりもできるものです。
第2章 HSPが抱えやすい心の問題
HSPが抱えやすい心の問題について、この本では4つ紹介されています。
私なりにざっくりまとめると、
自尊心が低いがために自分で自分を苦しめてしまっている
ということです。
その苦しみは、ちょっと見方を変えるだけで随分とラクになるはずです。
HSPが抱えやすい心の問題として「自分自身に高度な要求をしてしまう」という問題が1つ目に挙げられています。
具体的には、
- 「いかなる状況でも100%ベストを尽くさなければならない」
- 「まわりの人に弱みを見せてはならない」
- 「一緒にいる人を楽しませなくてはならない」
- 「失敗をしてはならない」
などです。
なぜHSPがそういったルールに縛られてしまっているかというと、繰り返しになりますが、自尊心が低いためです。
「自分に愛される価値がある」と信じる気持ちが弱ければ弱いほど、それを取り返すための戦略をとってしまいます。
その「戦略」というのが、HSPの場合は「高い基準」なのです。
HSPには、人の輪に入るためにお金を出す人はたくさんいます。誰かに親切にしてもらったときにチップを払う人もいます。
もしあなたもそのようにしてお金を払う1人だとすれば、相手が好いてくれているのがお金ではなくあなた自身だということを確信できないのではないでしょうか?
このようにしてあなたの自尊心はどんどん小さくなっていきます。
この悪循環から抜け出すには、自分に課しているルールを破って、自分で設定してしまっている高すぎる基準を下げる必要があります。
不安と裏腹にルールを破ったり基準を下げても、実際には大半の人が自分を好いてくれていることが分かります。
それからはもっとリラックスして、積極的に人と接することができます。
ここで、本の一節を引用したいと思います。
愛される価値のある人間になるためにさまざまな努力をしているとしたら、やるべきなのは、努力するのをやめることです。他の人から距離を置かれないよう、自分のある面を隠そうとあれこれ努力しているなら、同じくその努力はやめるべきです。本当の自分を見せることでまわりの人が逃げて行くのが怖かろうと、見せかけの自分とは決別してください。確かにそうすることで恐怖に身をさらすことになるでしょう。でも、逃げていかなかった人との関係が深まるかもしれません。
さて、ここまでで、HSPの能力とHSPが抱えやすい問題を見てきました。
次に、鈍感な人たちとうまく付き合う方法を伝えます。
第3章 鈍感な人たちとうまく付き合う方法
この本では11の方法が紹介されていますが、中でも私が「これは大切だ」と感じた3つに絞って紹介します。
1.周囲の人に自分がHSPであることを伝える
1つ目は「周囲の人に自分がHSPであることを伝える」ということです。
作者は「HSPであることは身近な人たちが知ってくれているほうがよい」と述べています。
しかし、自身がHSPであることを打ち明けたことで周囲の理解を得られたという人もいれば、逆に、病的な人と思われてしまった人や「仕事の負担を減らして欲しいからそんなことを言うのだろう」と疑われてしまった人もいるようです。
この違いはどこからくるのでしょう?
ポイントは伝え方です。
作者は「敏感すぎる人(HSP)」という言葉ではなく、
- 「自分が何を必要としているのか」
- 「何に秀でているのか」
- 「何がうまくできないのか」
を伝えるようにしていると言います。
大切なのは相手に「自分に特別な才能と制約があるのはHSPだからだ」と知ってもらうことではなく、自分自身がHSPのことを理解し自分と同じような人がいることを知っておくことです。
自分で自分を受け入れることができれば、自分を奇妙に思う人たちの中に飛び込む勇気を持てます。
2.自分の限界点をはっきり伝えておく
鈍感な人たちとうまく付き合う方法2つ目は「自分の限界点をはっきり伝えておく」ということです。
自分が耐えられる境界線を引いておき、それを超えそうな時は「NO」と言います。
境界線を引けないと、毎日過剰な刺激を受けることになってしまいます。
限界点の低いHSPにとって、これほど辛いことありません。
他の人に迷惑をかけたくない思いと、自分の敏感さに配慮する必要と、ジレンマに陥ってしまうのです。
自分の限界点をはっきり伝えておくことで、このジレンマは回避できます。
- 「もっとここにいられたらいいんだけど、疲れてきちゃった。もうすぐ帰らないと、明日の仕事に支障が出そう」
- 「あともうちょっとで私は疲れてしまって、あなたの言葉に耳を傾けられなくなりそうなの」
そう声に出して相手にはっきり伝えればジレンマは自然と解消され、相手にも「決断に加わった」という感覚を抱かせることもできます。
3.対話となるよう心がける
鈍感な人たちとうまく付き合う方法3つ目は「対話となるよう心がける」ということです。
HSPの人は相手の話にきちんと耳を傾け、自然とシンパシーを抱きます。
この能力のおかげで、たまった不満を解消したいと思っている人の気持ちのはけ口にされてしまうことがあります。
どんな種類の会話、どの人間関係に自分の限りあるエネルギーを費やすのか、きちんと選ぶことが大切です。
聞き役になることが多いHSPにとって大事なのは、逆に自分の言葉も相手にちゃんと聞いてもらうこと。
聞くだけでなく自己表現することで、過剰な刺激を受けるのを避けることができます。
第4章 敏感な自分とうまく付き合う方法
1.HSPの能力を楽しむ機会をつくる
HSPの自分とうまく付き合う方法1つ目は「HSPの能力を楽しむ機会をつくる」ということです。
前の章のおさらいになりますが、HSPの能力には、
- 一度に多くの情報を吸収できる
- 音やにおいなど細かな違いを察知できる
- 想像力が豊かである
- 内的生活が充実している
などがありました。
こういったHSPの能力や気質を楽しめる機会を持ちましょう。
いくつか紹介します。
- 自然を慈しむ
- おいしいものを食べる
- 好きな音楽を聴く
- 動物と過ごす
- 日記か詩か本を書く
- 芸術鑑賞をする、または自分で創る
- 深くて質の高い人間関係を築く
自分が好きなものを選んで、HSPの利点を楽しむ機会を確保しましょう。
2.五感から過度に刺激を受けたないための対策をとる
HSPの自分とうまく付き合う方法2つ目は、五感から過度に刺激を受けたないための対策をとるということです。
優先して対策したいのは、特に視覚からの刺激です。
外の刺激の80%は視界から入ってくるので、刺激の大部分は目を閉じることですぐにシャットアウトできます。
電車やバスに乗っている時も、目を閉じるだけで刺激を減らすことができます。
他には、サングラスや伊達眼鏡、帽子、大きめの日傘を使って減らすこともできます。
音の刺激は、ヘッドホンで音楽を聴くことで減らせます。
3.自分自身へ愛情を向けて、自分を守る
HSPの自分とうまく付き合う方法3つ目は、「自分自身へ愛情を向けて、自分を守る」ということです。
一緒にいる人たちがHSPである自分の気持ちをわかってくれないと感じる状況に見舞われた時、HSPは「他の大多数の人に合わせるべきだ」と考えることがあります。
そんな時、自分を責めるのではなく客観的な視点を持って支えましょう。
具体例として、著者とクライアントとのカウンセリングの会話を引用します。
このクライアントは、ナーバスになるたびに心の中で自分自身に「落ち着きなさい」とか「リラックスするのよ」と怒りのこもった言葉を投げかけていることに気づきました。
そんなクライアントとの会話の続きです。
セラピスト:ナーバスになっているのがあなたの妹さんだったとしても、あなたは同じことを言いますか?
クライアント:いいえ!それは思い付きませんでした。
セラピスト:ではもし妹さんに言葉をかけるとしたら、何と言いますか?
クライアント:「あなたが楽になれるように、何か私にできることはない?」って聞くと思います。
間違いを犯した時に自分を咎めてしまう人は、自分自身を客観的に外から見て、愛情深い言葉をかける練習が有効です。
とくに先ほど引用した事例のように、自分の愛する人に置き換えて想像してみるという方法があります。
染み付いた習慣を変えるのには時間がかかりますが、新たな習慣が身についてくると古い習慣はゆっくりと消えていきます。
普段他の人からネガティブなことを言われることもあるのに、自分まで自分に対してネガティブな語りかけをするのは不健康な行為です。
自分自身を認めるよう心がけましょう。
まとめ
今回は、イルセ・サンさんが書かれた『鈍感な世界に生きる 敏感な人たち』の内容を紹介しました。
まとめます。
敏感な人たちが鈍感な世界で自分らしく生きるコツは、
- HSPの能力を知ること
- HSPが抱えやすい心の問題を知ること
- 鈍感な人たちとうまく付き合う方法を知ること
- 敏感な自分とうまく付き合う方法を知ること
この4つです。
具体的には、
- HSPの能力とは、共感力に長け、思慮深く、1人の時間も充実させられるということ。
- HSPが抱えやすい心の問題とは、自尊心が低いがために、自分で自分を苦しめてしまっているという問題。
- 鈍感な人たちとうまく付き合う方法とは、HSPであることを打ち明け、限界点をはっきり伝えておくということ。
- 敏感な自分とうまく付き合う方法とは、HSPの気質を誰よりも自分自身が理解し、その能力に沿った環境下に自分を置き、HSPの才能や能力を最大限楽しむこと。
私はこのように理解しました。
他にもこの本では、HSPのためのアイデアリストとして、敏感な人たちに喜びや心身の健康をもたらす活動がまとめられています。
気になった方はぜひこの本を実際に手にとって読んでみてください。
この記事は以上です。