書評

中田敦彦『僕たちはどう伝えるか』伝達能力を最大化する4つのポイント

中田敦彦さんの『YouTube大学』が、めちゃくちゃ面白いです。

「わかりやすい」「おもしろい」「ためになる」の三拍子揃ったチャンネルが取り上げるテーマは、政治・経済・テクノロジー・文学など多岐にわたります。

私は特にこの人のする文学の話が大好き。本を読んだことのない人にも、そして本をすでに読んだことのある人にもぜひぜひ聞いて欲しい面白さです!先日視聴した、エドワード・ゴーリーの回では、視聴したその日のうちにどうしても読みたくなって書店へ行きました。

直近で更新された『古事記』解説もハイパー面白かったし、ぶっとんだ展開をさらに面白く話すので、もうほんと面白さの極みです。更新されるのが楽しみです。

中田敦彦さんのチャンネルを聞いてて私が一番「すごいなー」と思うのは、やはり「わかりやすさ」

  • 何をどうしたら、この説得力が生まれるんだろう?
  • 人に話をする時に、どうやったらより伝わりやすくなるんだろう?
  • 中田敦彦さんは、どんなことに気をつけて話しているんだろう?

そんな疑問を抱いていたところ『僕たちはどう伝えるか』という著書があることを知りました。これだ!と思い、さっそく購入して読んでみました。

本ページでは、中田敦彦さんの『僕たちはどう伝えるか』を読んで、特に「ここが面白いな」と私が感じたポイントを4つに絞って紹介します。

【はじめに】プレゼン=ビジネスだけのものじゃない

プレゼンと聞くと、ビジネス上のプレゼンのイメージが強いです。営業マンがパワポ資料を使って訪問先へ自社商品の売り込み……みたいな。しかし、ビジネスに限ったことではありません。

著者の中田さん曰く、プレゼンとは「伝達能力」のこと。そして、変わりゆくこれからの時代を生き残るにはこのプレゼン力(伝達能力)は必須。ということです。

空気を読む人間が、衰退していく。
時代を読む人間が、台頭していく。

以心伝心してくれるのを待っていたら、もう連携できない。

多様な価値観が混じり合う時代がやってきた。

そんなむき出しの、野生の時代にもう一度、人類はその最大の武器を使うことになる。
伝達能力だ。

伝達能力は人類最大の武器……

つまり、ビジネスマンに限らず、すべての人に・人類にとって伝達能力は必要なものなのです。

ポイント1.「どう伝えるか」が最重要

大前提として、人間は「何を伝えるか」にこだわります。

もちろん内容は大事です。内容がなければそもそも「伝えよう」という気持ちは起こらないわけですから。

ですが、その上でより大事なことが「どう伝えるか」です。

わかりやすい具体例が挙がっていたので紹介します。

A.手元のスマホをいじりながら無表情で「愛してるよ」と言う
B.ほっぺたを赤くして相手の目を見ながら「だいっきらい」と言う

Aは口では「愛してるよ」と言いながら、おそらく愛情のかけらもありません。

一方のBは「だいっきらい」と言いながら、もうほとんど「大好き」って言ってるようなものですよね。

このように、人間は目の前の人が話している「内容」を聞いているのではなく、「話をしている人」を見ているんだそうです。

具体的には、たたずまいや顔つきです。

音声だと、話し方や語尾でしょう。自信がある人が話した内容は「なるほど」「そうだろうな」って納得できます。

文章だってそうです。ライティングの仕事をしていると「なるべく断言してください」とアドバイスを受けることがあります。「〜〜〜かも知れない」とか「たぶん、おそらく〜〜〜」とか使わないでってことです。

たしかに「〜〜〜かも知れない」とか「たぶん、おそらく〜〜〜」が多用されている文章って……「大丈夫か?この記事ほんとに信頼できるのか?」って不安になりますよね。

相手(読者)へ伝えるには「何を」以上に「どう」が大事だなとあらためて思いました。自信のあるただずまい・顔つき、根拠のある言葉……。

自分が何かを伝えたい時は「どう」伝えるのがベストかを考えてみるようにします。

ポイント2.使いたい言葉をカットする

専門用語やカタカナ語は絶対に使わないということです。

一見便利な言葉ってありますよね。それを使ったらなんとなくかっこいいな、とか、できるっぽいな、とか。とにかく「伝わらないかも知れないけど使いたくなる言葉」。

ここで私が思い出したのが、人気ブロガー・ヒトデさんの『意識の高い大学生ブログ』という記事です。意識高い系をネタにした創作記事なんですが、すごく面白いです。

たとえば、こんな感じ。

イシューも使ってどんどん人脈の輪を広げていきます。
あとは自分磨きのためにも何か刺激を受けたらコミットする癖をつけたい。これは僕のアジェンダかな。

これぞまさに本書で取り上げられている「使いたい言葉こそカットしろ」の例。

伝わらない言葉を使ってしまうと、人の心が離れてしまうんです。

ヒトデさんのブログ記事は「ネタ」として書いてあるから面白いのであって、この学生と会話することを想像すると、疲れます。もう一回会いたいかと聞かれたら、たぶん会いたくないです。

誰かに伝えたいなら「自分が使いたい言葉」ではなく「相手に伝わる言葉」を使いましょう。

ポイント3.謙遜は悪

耳が痛いです。なぜなら自分がよくやってしまうからです。

たとえば会社員時代、上司に仕事の進捗を報告する時に、

「まだまだ改善の余地はあるかと思うんですが、ひとまず現時点での進捗を報告させていただきますと……」

こんな言い方をしてしまうことがありました。

自己防衛のためにワンクッション挟んじゃうんですよね。「まだまだ改善の余地はあるかと思うんですが」とか。上司によく怒られていました……。「結論から言え」「回りくどくて分からん」と。

当時は(そっちの理解不足だろ……)などと内心毒づいてましたが、今思えばたしかに不要な謙遜は悪だなと思います。

1つは回りくどくなる(相手の時間を奪ってしまう)という点で、悪。もう1つは「聞き手に甘えている」という点で、悪です。

聞き手に甘えてハードル下げてないで自信を持てってことです。

ここまで聞いて「でも自信満々のナルシストの態度も鼻につかない?それこそ嫌われない?」って意見もあると思います。

しかし中田さん曰く「それは自信があるのではなく自信過剰の状態」ということです。

大切なことは、「根拠のある適度な自信を持ち、謙遜といういいわけを慎む」ということ。

ポイント4.伝えたい考えは失敗談にからめて話す

最も人の心をつかむのは、失敗談である。それも、成功している人の語る失敗談である。

これは「なるほどなー」「たしかに!」と思ったポイントです。

これってどうしてだと思いますか?性格が悪い人が多いから?他人の不幸は蜜の味がするから?

……ではなくて、成功は「それぞれ」だけど、失敗は「あるある」だからです。

江戸時代の肥前平戸藩主・松浦静山の有名なこの言葉を知っている人は多いでしょう。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

勝ち(成功)には不思議な勝ちがあるが、負け(失敗)には不思議な負けというものはない。

つまり、失敗談人々の共感を得やすいんですよね。

それに対し、成功談は共感を得づらい。得づらいどころか「なーんだ、こいつの話ただの自慢話じゃん」「つまんねーから聞くのやめよう」と反感を買ってしまうことさえある。

自分の話を聞いてもらいたい時、話に説得力を持たせたい時は、失敗談やコンプレックスと絡めるのが有効だよね、というお話でした。

そういえばメンタリストDaiGoさんも、動画や本の中でよく自分のコンプレックスや「昔はこうだった」というお話をされます。自分の失敗やコンプレックスなど本来なら隠したいであろう部分を赤裸々に絡めて話すからこそ、あれだけ多くの人の共感を得られるのだろうなと思います。

まとめ

『僕たちはどう伝えるか』まとめ
  • 【前提】これからの時代、「伝達能力」が最大の武器となる
  • 「何を」伝えるかより、「どう」伝えるかを考えるべし
  • 自分が使いたい言葉ではなく、相手に伝わる言葉で話すべし
  • 根拠のある自信をみなぎらせて、不要な謙遜は慎むべし
  • 成功談より失敗談のほうが人々の共感を得られると肝に銘じるべし

以上、中田敦彦さんの本『僕たちはどう伝えるか』で私が気になったポイントでした。気になった方は手にとってみてください。

めくった時「んっ?」てくらい行間が空いてるのでw、30分くらいでサクサクッと読めます。