書評

【感想】もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらを読みました!

通称『もしドラ』ですね。

高校野球の女子マネージャーが、ドラッカーの『マネジメント』にヒントを得ながら、弱小野球部を甲子園に連れて行く目標を実現させていく物語です。

10年以上前に発売された本。

すごーく話題になって、すごーく売れました。

当時、書店で働いていた20代の私は(この本やけに最近売れるなあ…ラノベ調イラストの表紙でとっつきやすくしてあるんだろうけど、内容はどうせ難しいんでしょ…)って思っていました。ひねくれています。

遅ればせながら読んでみて「うわ、読みやすいしおもろい!ストーリーも泣ける!」という感想です。

この記事では「マネジャーの資質となる真摯さ」というテーマに絞って紹介します。

マネジャーの資質は才能ではない。真摯さである。

マネジャーの資質は才能ではない。真摯さである。

これは、この本の主人公みなみが、最初に衝撃を受けた部分です。

私も「えっ?」と思いました。

イメージとかけ離れていたためです。

マネジャーって、人の管理とか、目標達成ロードマップを具体的に描けるとか、そういう才能が求められるんじゃないの…?

そしてそれは後天的に獲得できるものなんじゃないの…?って。

しかしドラッカーは「真摯さマジだいじだから!しかも真摯さって、後天的に獲得できないものだから!」と力説(イメージ)します。

真摯さに関する部分を引用します。

このような資質(真摯さ)を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネジャーとしても、紳士としても失格である。

  • 愛想の良さ<真摯さ
  • 人付き合いの良さ<真摯さ
  • 有能さ<真摯さ
  • 聡明さ<真摯さ

真摯さを欠く者は、紳士としても失格…!

マネジャーの仕事は、体系的な分析の対象となる。マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。

え…

じゃあマネジャーって「なれる」「なれない」じゃなく、「である」「ではない」なんですね。

さらに、「組織の規模」に関する章では、このようにも語られています。

真摯さを絶対視して、初めてまともな組織といえる。それはまず、人事に関わる決定において象徴的に表れる。真摯さは、とってつけるわけにはいかない。すでに身につけていなければならない。ごまかしがきかない。ともに働く者、特に部下に対しては、真摯であるかどうかは二、三週間でわかる。無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如は許さない決して許さない。彼らはそのような者をマネジャーに選ぶことを許さない

「許さない」「決して許さない」「許さない」って3回も許さない言ってて、ものすごく強い拒絶のメッセージを感じ取りました。

ドラッカーがいかに「マネジャーに真摯さは必要不可欠である!!!」としているかが分かります。

真摯さとは、成果を目的にすること

じゃあ、マネジャーに求められる真摯さって何かって言うと、組織の人間の関心を努力ではなく成果に向けさせることです。

甲子園出場をかけた試合前日、主人公みなみは、友人の夕紀とこんな会話をします。

「野球部は行くよ。甲子園へ行く。私のそういう予感て当たるんだから」

みなみは野球部を甲子園に連れて行くことを目標に、『マネジメント』からヒントを得て、弱小野球チームの立て直しに一役買っていたんです。

メンバーのコンディションも士気も高まり、いよいよ明日だ…!

ってタイミングですね。

そんなみなみに対し、夕紀は言うんです。

「もし負けて甲子園に行けなくても、それで良いと思ってる。大切なのは結果ではなくプロセスだと思うから」

ってことをですね。

読者の私も「ふむふむ。それもそうだなー」なんて思ってたんですが、そこでみなみが「でもね…」と意見を言います。

「でもね……私は、野球部のマネジャーとして、やっぱり、結果を大切に思わないわけにはいかないんだ」

そう言って『マネジメント』を取り出し、次の箇所を示します。

組織構造は、組織のなかの人間や組織単位の関心を、努力ではなく成果に向けさせなければならない。成果こそ、すべての活動の目的である。専門家や能吏としてでなくマネジャーとして行動する者の数、管理の技能や専門的な能力によってでなく成果や業績によって評価される者の数を可能なかぎり増やさなければならない。成果よりも努力が重要であり、職人的な技能それ自体が目的であるかのごとき錯覚を生んではならない。仕事のためではなく成果のために働き、贅肉ではなく力をつけ、過去ではなく未来のために働く能力と意欲を生み出さなければならない。

「だから、成果よりも努力が重要だって言えない。それは真摯さに欠けると思うんだ。」

っていうのが、みなみの出した結論です。

まとめ:本の感想

読み進めていくうちに「なるほど」と理解できたり、「えっ、そうなんだ」と発見があったり、学びが多い1冊でした。

涙腺よわよわなので野球部が実績上げていくところはホロリときました。チームが頑張って頑張って最後に「わー!」みたいなの弱いんですよね…泣ける…。

話を戻しまして、今回フォーカスした「真摯さ」それは「成果を目的とする」ということだと解釈しました。

成果を目的とする、ってしばしば悪い意味で使われるイメージないですかね?

「この成果主義者め」みたいな。

「いやいや結果よりプロセスが大事だよ!」みたいな。

でも、それって「成果を目的とすることから目をそらし、努力に逃げた人間特有の言い訳なのかもな…」って、自分を振り返ってみても思いました。

努力って割と良いイメージですよね。

ぶっちゃけラクです。思考停止してても努力ってできます。ていうか思考停止したほうが努力ってはかどります。

工夫のない努力は、ですね。

ただ手を動かせば良いんだから。

周囲からもそれっぽく頑張ってるふうに見えるので。

でも、成果を上げるということを目的にしたら、また違ったやりがいや感動も得られるんじゃないかな。

もしドラ読んでそういうふうに思いました。

他にも、イノベーションとか組織の規模についてとか、重要なことがストーリーにのせて分かりやすく書かれています。

気になる方はぜひ本を手にとってみてください。

この記事は以上です。